不動産の購入にかかる諸経費の種類|相場と支払時期も解説

  • 記事公開日:2018/03/01
  • 最終更新日:2023/01/31

戸建やマンションなどの不動産を購入する際、物件価格以外にも様々な諸経費がかかります。

諸経費は原則として現金で支払うものが多いため、あらかじめ考慮に入れておくことが大切です。

この記事では、不動産購入時の諸経費にはどのようなものがあるのか、それぞれの諸経費を支払うタイミング、諸経費の金額相場や算方法をご説明。

また、不動産購入時の諸経費をシミュレーションし、諸経費を節約する方法もご紹介します。

不動産購入時に物件価格以外にかかる諸経費

不動産購入時に物件価格以外にかかる諸経費は、新築物件で物件価格の3~7%、中古物件で6~13%ほどと言われています。
仮に3,000万円の中古物件を買ったとすると、諸経費は180~390万円ほどとかなり高額になります。

諸経費は、仲介手数料などの「諸費用」と不動産取得税などの「税金」に大別されます。
不動産購入時の諸経費と税金にはどんなものがあるのか、以下でご説明します。

物件価格以外にかかる諸費用

物件価格以外にかかる諸費用には、以下のようなものがあります。

  • 手付金
  • 仲介手数料
  • 住宅ローン諸経費
  • 保険料
  • 司法書士報酬
  • 家具・引っ越し費用
  • 水道加入負担金
  • 管理費・修繕積立金
  • ローン利子分返済額

不動産購入時に支払う税金

不動産を購入するに当たって支払う税金には、以下のようなものがあります。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 固定資産税等
  • 建物の消費税

不動産購入の諸経費を支払うタイミング

不動産購入時の諸経費は、売買契約時、決済・引き渡し時、引っ越し時、不動産購入後の4つのタイミングで支払います。
それぞれのタイミングで、どの諸経費を支払う必要があるのか、以下で解説します。

売買契約時

不動産の売買契約時に支払う諸経費は、以下の3つです。

  • 手付金
  • 仲介手数料(半額)
  • 印紙税

手付金は購入代金に充てられるので諸経費とは言えませんが、契約時に支払う必要があるので考慮に入れておきましょう。
仲介手数料の残り半額分は、決済・引渡し時に支払うのが一般的です。

決済・引渡し時

不動産売買の決済・引渡し時に支払う諸経費は以下の通りです。

  • 仲介手数料(半額)
  • 司法書士報酬
  • 住宅ローン諸経費
  • 保険料
  • 建物消費税
  • 登録免許税
  • 固定資産税・都市計画税の日割り額

固定資産税・都市計画税の日割り額とは、中古不動産を購入した場合、購入した年の固定資産税・都市計画税は既に売主が支払っています。
このため、購入後の日数で日割り計算した税額を売主に支払います。

なお、住宅ローンの頭金は物件価格の一部なので諸経費ではありませんが、決済時に現金で支払う部分であるため考慮に入れておきましょう。

引っ越し時

引っ越し時に必要となる諸経費も考えておきましょう。

  • 家具購入代金
  • 引っ越し費用
  • 水道加入負担金

不動産購入後

不動産購入後に必要となる諸経費もあります。

  • 管理費・修繕積立金(マンションのみ。毎月)
  • ローン利子返済額(毎月)
  • 不動産取得税(1回のみ)
  • 固定資産税・都市計画税(毎年)

マンションを購入した際に支払う管理費・修繕積立金とローン利子返済額は、購入後毎月支払う費用。
不動産取得税は購入後1回のみ支払う税金で、固定資産税・都市計画税は購入後毎年支払う税金です。

不動産購入時の諸費用と金額相場

不動産を購入する際の諸費用は下の表のとおりです。
以下で、詳細と金額相場をご説明します。

【不動産購入時に支払う諸費用】

諸費用 金額相場
手付金 物件価格の5~10%
仲介手数料 売買価格×3%+6万円(+消費税)
住宅ローン諸経費 借入額の2.2%
保険料 戸建:年間約10万円
マンション:年間約1万5千円
司法書士報酬 10万円前後
家具・引っ越し費用 ケースにより異なる
水道加入負担金 10~30万円程度だが支払不要な場合もあり
管理費・修繕積立金(マンションのみ) 約22,000円(マンションの規模や立地等により異なる)
ローン利子返済額 住宅ローン契約による

手付金

買主が売買契約時に支払う手付金は、買主側の一方的なキャンセルを防ぐための費用。
物件価格の5~10%が相場で、決済時に売買代金の一部に充てられます。

物件価格の一部になりますが、購入時に必要な費用として考慮に入れておきましょう。

買主側が取引をキャンセルする場合、手付金は返金されません。
逆に、売主側の事情でキャンセルになる場合は、手付金の2倍の額が買主に支払われます。

手付金:物件価格 × 5~10%

仲介手数料

諸経費の中で一番高額なのが「仲介手数料」。

不動産取引が成立した時に、売主と買主の間に立ち不動産取引のサポートを行う不動産会社へ支払うもので、契約時と決済時に半額ずつ払うのが一般的。

ただし、新築戸建や新築マンションなど、売主が不動産会社の場合は仲介手数料が不要です。

仲介手数料の上限は法律で物件価格の「3%+6万円」と定められており、上限額を支払うケースが多いです。
また、仲介手数料には消費税がかかるので、仲介手数料 + 消費税(仲介手数料の10%)となります。

仲介手数料:(売買価格×3%+6万円)×1.1(消費税分上乗せ)

住宅ローン諸経費

住宅ローンを利用する場合、住宅ローン諸経費として「融資手数料」と「保証料」が必要になります。
相場は、融資手数料と保証料合わせて「借入額の2.2%」です。

住宅ローン諸経費:借入額 × 2.2%(税込)

融資事務手数料

「融資事務手数料」は、住宅ローン申し込み手続きにかかる事務手数料として金融機関へ支払う手数料です。

保証料

住宅ローンの加入時に保証会社に「保証料」を支払います。

以前は、金融機関から融資を受ける際に連帯保証人を立てることが多かったのですが、現在は保証会社が保証人となるケースが一般的です。

住宅ローンの返済が滞った場合に、保証会社が金融機関へ返済し(「代位弁済」と言う)、その後は、保証会社へ返済していくことになります。

各種保険料

不動産購入時に支払う保険料には、火災保険料・地震保険料、団体信用生命保険などがあります。

火災保険料・地震保険料

住宅ローン契約時に加入が必須の「火災保険料」。
一般的に戸建の火災保険料の方がマンションより高く、「地震保険あり」の火災保険にした方が高くなります。

火災保険料は、補償内容、保険期間、建物の構造・面積・築年、エリアなど様々な条件によって異なるため一概には言えませんが、地震保険ありの場合の火災保険料の相場は、築浅の戸建が10万円/年程、築浅のマンションが1万5千円/年程度です。

戸建の保険料:年間約10万円
マンションの保険料:年間約1万5千円

団体信用生命保険

住宅ローン契約時に加入が必須の「団体信用生命保険」(通称「団信」)は、住宅ローン返済期間中に亡くなった場合などに、ローン残金が保険で賄われる仕組み。

この場合ローンは完済され、家族に返済義務は残りません。
「団信」の保険料は住宅ローン金利に含まれていることがほとんどです。

団体信用生命保険:金利に含まれるため別途支払う必要なし

司法書士報酬

不動産を購入したら不動産を法務局で登記する必要があります。

新築物件の場合は土地の「所有権移転登記」と建物の「所有権保存登記」が、中古物件を購入した場合は土地・建物の「所有権移転登記」がそれぞれ必要です。

また、住宅ローンの抵当権を設定した場合は、「抵当権設定登記」も必要となります。

法務局での登記事務を代行してくれる司法書士に払うのが「司法書士報酬」で、料金は司法書士事務所によって異なりますが、10万円前後見込んでおくと良いでしょう。

司法書士報酬:10万円前後

家具・引っ越し費用

どんな家具をどれだけ購入するかは人によってケースバイケース。

また、引っ越し費用は、距離や荷物の量によって決まり、引っ越し業者によっても料金が異なるので、複数の会社から見積もりを取ることが大切です。

家具・引っ越し費用:ケースにより異なる

水道加入負担金

「水道加入負担金」は、自治体の水道局に水道利用申し込みをする際に支払うもの。

自治体により額が異なりますが、だいたい10~30万円程度。
自治体によっては払わなくても良かったり、物件価格に含まれていたりすることも多いので確認しましょう。

水道加入負担金:10~30万円程度(支払不要な場合もあり)

管理費・修繕積立金

マンションを購入した場合、管理費・修繕積立金を毎月支払う必要があります。

国土交通省の調査(平成30年)によると、管理費の平均額は月額10,862円、修繕積立金の平均額は月額11,243円で、合計22,105円です。

管理費・修繕積立金:約22,000円

ただし、管理費・修繕積立金の額は、立地やマンションの規模などにより異なり、また築年が経つにつれて値上げされるケースもあるので、確認が必要です。

なお、戸建てを購入する場合は、必要に応じてその都度修繕費を支払います。
住み始める前に修繕が必要な場合は、必要額を見積もっておきましょう。

ローン利子分返済額

不動産購入後に住宅ローンの返済をしていきます。
この内、元本分は物件価格の一部ですが、物件価格以外にローン利子分返済額も考慮しましょう。

ローン利子返済額は、固定金利か変動金利か、借入時の金利水準、借入額や返済期間により異なります。

ローン利子分返済額:住宅ローン契約により異なる

不動産購入時に支払う税金と計算方法

不動産を購入するに当たって支払う税金は下の表のとおり。以下で、各税金の詳細と計算方法をご説明します。

【不動産購入時に支払う税金】

税金 計算方法
印紙税 2万円
(契約金額や借入額が1千万円を超え5千万円以下の場合)
登録免許税 固定資産税評価額 × 税率
(登記の種類ごとに異なる)
不動産取得税 固定資産税評価額 × 税率
(土地1.5%、建物3%)
固定資産税・都市計画税 固定資産税評価額× 税率
(固定資産税:1.4%、都市計画税:0.3%)
建物の消費税 建物部分の購入代金×消費税率(10%)

印紙税

「印紙税」は契約書一通ごとに、郵便局などで買える収入印紙を貼る形で国に納める税金。

不動産取引に当たっては、以下の2つの契約書があります。

  • 不動産の「売買契約書」
  • 住宅ローンの「金銭消費貸借契約書」

それぞれの契約書に記載された契約金額に応じて、印紙税額が決まっています。

【印紙税額】

契約金額 軽減税額※
100万円を超え500万円以下 1千円
500万円を超え1千万円以下 5千円
1千万円を超え5千万円以下 1万円
5千万円を超え1億円以下 3万円
1億円を超え5億円以下 6万円

※令和6年3月31日までに作成される契約書に関しては軽減税額が適用されます。

たとえば、4千万円の物件を買って3千2百万円を借り入れた場合、どちらも印紙税額は1万円になるので、印紙税額合計は2万円となります。

印紙税額:2万円(契約金額および借入額が1千万円を超え5千万円以下の場合)

登録免許税

「登録免許税」は、不動産の登記を行う際にかかる税金。
前述したとおり、不動産を購入した際には「所有権保存登記」、「所有権移転登記」、「抵当権設定登記」などが必要となります。

税額は、所有権移転登記・所有権保存登記の場合、固定資産税評価額に税率を乗じた額、抵当権設定登記の場合、借入金額に税率を乗じた額になります。

<所有権移転登記・所有権保存登記の場合>

登録免許税:固定資産税評価額 × 税率(登記の種類ごとに異なる)

固定資産税評価額とは3年に1度自治体が評価する土地建物の評価額。登記の種類ごとの税率は下の表のとおりです。

登記の種類 税率 備考
土地の所有権移転登記 1.5% 令和5年3月31日までの軽減税率
建物の所有権保存登記 0.15% 令和6年3月31日までの軽減税率
建物の所有権移転登記 0.3% 令和6年3月31日までの軽減税率

<抵当権設定登記>

登録免許税:借入金額 × 0.1%

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課される税金。
不動産取得後約6か月後に請求されるので、出費を見込んでおきましょう。

不動産取得税:固定資産税評価額 × 税率(土地1.5%、建物3%)

※ 令和6年3月31日までに住宅を取得した場合、税率が土地は1.5%、建物が3%となっています。

固定資産税等

固定資産税と都市計画税は、1月1日時点の不動産の所有者が毎年払う税金。

固定資産税・都市計画税:固定資産税評価額× 税率
(固定資産税:1.4%、都市計画税:0.3%)

住宅1戸当たり200㎡であれば住宅用地の軽減措置があり、土地の固定資産税を計算する際の固定資産税評価額が1/6に、都市計画税が計算する際の固定資産税評価額が1/3になります。

さらに、新築住宅については、床面積の要件を満たせば一定期間建物の固定資産税が1/2になります。

建物の消費税

不動産を購入する際、建物のみ消費税がかかります。ただし、売主が個人の場合は支払い不要です。

建物の消費税:建物部分の購入代金×消費税率(10%)

不動産購入時の諸経費シミュレーション

住宅を購入した時の主な諸経費の目安額について、新築の戸建、中古の戸建の場合に分けてシミュレーションします。

新築戸建のケース

土地価格2千万円、建物価格2千万円、総額4千万円の新築戸建を購入したと仮定し、借入金額は取引金額の8割で3千2百万円とします。

税金計算の基となる固定資産税評価額は、取引金額の7割で計算しました。
新築戸建の売買で売主が不動産の場合は、仲介手数料がかかりません。

【新築戸建諸経費シミュレーション】

諸経費 計算式等 金額
諸費用 仲介手数料 (売買価格×3%+6万円)×1.1
住宅ローン諸経費 借入額 × 2.2% 704,000円
火災保険料(地震保険あり) 年額10万円 100,000円
司法書士報酬 10万円 100,000円
税金 印紙税 売買契約書:1万円 10,000円
金銭消費貸借契約書:1万円 10,000円
登録免許税 土地の所有権移転登記:固定資産税評価額 × 1.5% 210,000円
建物の所有権保存登記:固定資産税評価額 × 0.15% 21,000円
抵当権設定登記:借入額 × 0.1% 32,000円
不動産取得税 土地:固定資産税評価額 × 1.5% 210,000円
建物:固定資産税評価額 × 3% 420,000円
1,817,000円

なお、新築マンションの場合は、火災保険料が安くなる一方、管理費・修繕積立金がかかります。

中古戸建のケース

土地価格2千万円、建物価格1千万円、総額3千万円の中古戸建を購入したと仮定し、借入金額は取引金額の8割、固定資産税評価額は取引金額の7割でシミュレーションしました。

中古戸建の諸経費が新築戸建と異なる点は、「仲介手数料」がかかることと、建物の登録免許税の税率が0.3%と少し高くなる点です。

【中古戸建諸経費シミュレーション】

諸経費 計算式等 金額
諸費用 仲介手数料 (売買価格×3%+6万円)×1.1 1,056,000円
住宅ローン諸経費 借入額 × 2.2% 528,000円
火災保険料(地震保険あり) 年額10万円 100,000円
司法書士報酬 10万円 100,000円
税金 印紙税 売買契約書:1万円 10,000円
金銭消費貸借契約書:1万円 10,000円
登録免許税 土地の所有権移転登記:固定資産税評価額 × 1.5% 210,000円
建物の所有権保存登記:固定資産税評価額 × 0.3% 21,000円
抵当権設定登記:借入額 × 0.1% 24,000円
不動産取得税 土地:固定資産税評価額 × 1.5% 210,000円
建物:固定資産税評価額 × 3% 210,000円
2,479,000円

なお、中古マンションの場合は、火災保険料が安くなる一方、管理費・修繕積立金がかかります。

不動産購入時の諸経費を少しでも抑える方法

不動産購入時の諸経費を少しでも抑える方法はあるのでしょうか。
以下で、ローン返済額の利子相当分、引っ越し費用、保険料、仲介手数料を抑える方法をご紹介します。

ローン返済額の利子相当分を抑える

住宅ローンの利子相当分は、同じ金利で比べると頭金が多い(借入金額が少ない)ほど、金利が低いほど少なくなります。

「固定金利」を選ぶと利子相当分が変わらないので返済計画が立てやすいですが、一般的に「変動金利」より金利が高いです。

金利動向等を総合的に勘案して、借入金額をどれくらいにするか、固定金利か変動金利のどちらを選ぶか決めましょう。

引っ越し費用を抑える

引っ越し費用を抑えるは、荷物の量を減らし引っ越し時期を選びましょう。

引っ越し前に不要な家具や本などかさばるものを処分しておくことで、引っ越し費用を抑えることが可能。
また、引っ越しシーズンの1~4月でなく、閑散期の6~8月や11~12月を選ぶと、引っ越し料金が安いことがあります。

もちろん、引っ越し業者によっても異なるので、複数の引っ越し業者の料金とサービス内容を比較検討しましょう。

保険料を抑える

保険料を抑えるには、まず補償内容を精査して必要なものだけに絞ることが大切。

また、火災保険の保険期間は1~10年が多いですが、保険期間が長いほど保険料は安くなり、また、1年ごとに支払うのではなく一括払いで払う方が安くなります。

仲介手数料を抑える

仲介手数料は、新築戸建や新築マンションなどで売主が不動産会社の場合は不要。

中古不動産の場合は、諸経費の中で仲介手数料が一番高額な費用なので、この仲介手数料を抑えることで大幅な節約が可能となります。

仲介手数料は、物件価格の「3%+6万円+消費税」が上限であり、上限額を請求する不動産会社が多いです。

ただ最近は、業務効率化などを行って買主の仲介手数料を割引・無料にする不動産会社もあります。
不動産会社を賢く選んで、仲介手数料を節約しましょう。

まとめ

この記事では、不動産購入時にかかる諸経費と支払のタイミング、金額相場について解説しました。

不動産を購入する際には、物件価格以外に、仲介手数料などの諸費用や不動産取得税などの税金がかかり、購入時にまとまった額を現金で用意する必要があります。

不動産を購入する際は、物件価格だけではなく、購入時や購入後の諸費用、税金、住宅ローン借入額などを総合的に考慮した上で、シミュレーションすることが大切です。