不動産を売る際、売却価格の金額がそのまま入ってくるだけかというと、実はそうではなく、不動産を売却するには経費がかかります。
不動産売却で発生する必要経費を考慮していないと、思っていたほど利益が上がらなかったり、住み替えの資金繰りが難しくなったりするので注意が必要です。
今回は、不動産売却に掛る必要経費について詳しく解説いたしますので、不動産売却をご検討中の方はぜひ参考にしてください。
不動産の売却で生じる必要経費の費用相場
不動産売却で発生する必要経費の相場は、不動産売却額の約5~7%です。
パーセンテージだけを見ると、それほど高くないと思うかもしれませんが、5,000万円で家を売却すると必要経費は250万円~350万円とかなりの金額になります。
決して安い金額ではないので、必要経費はどのようなものがあるか事前に把握しておきましょう。
不動産売却の必要経費に違いが生じる4つの理由
不動産売却での必要経費が、不動産売却額の約5~7%というのはあくまでも目安で、これより高くなることがあれば、反対に安く済むこともあります。
必要経費の額に違いが生じる主な理由は、次の4つです。
不動産の売却方法の違い
不動産を売却する方法には不動産会社に仲介を依頼する「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「不動産買取」があります。
仲介で不動産を売却した場合は、仲介手数料が発生しますが、不動産買取の場合は仲介手数料を支払う必要はありません。
仲介と不動産買取それぞれの必要経費を比較すると、不動産買取のほうが断然に安いです。
ただし、不動産買取の方は売却金額が相場よりも低くなりやすいので、一概に不動産買取の方がいいとは言えません。
また、不動産会社によっては仲介手数料無料や仲介手数料半額のサービスを実施しているので、どの不動産会社に依頼するかという点が重要といえるでしょう。
売却する不動産の種類の違い
マンションを売却するか、戸建てを売却するかでも違いがでてきます。
戸建の場合、土地の境界線が曖昧のまま売却すると、後々トラブルに発展するので注意が必要。
土地や戸建を売却する前、土地の境界線が不明瞭である場合に測量を行い、境界線を明確にしなければいけません。
特に実家を売却する時のように築年数が経っている不動産を売却する場合に必要になることが多いです。
土地の境界線がどうなっているかは、法務局で調べられるので、まずは法務局で確認してみましょう。
一方、マンションは土地の測量が不要なため、土地や戸建てよりも必要経費は安く済みます。
住宅ローンの有無
マイホームを購入する際に、ほとんどの人が住宅ローンを組みます。
住宅ローンが残っている不動産は売却することができないので、 不動産を売却する前に一括繰り上げ返済をして住宅ローンを完済しなくてはいけません。
額は住宅ローンを組んだ銀行によっても変わりますが、住宅ローンを一括繰り上げ返済するためには手数料が発生します。
さらに、住宅ローンを完済したら、抵当権抹消手続きが必要です。
抵当権抹消手続きをする際にも費用がかかります。
不動産を売却した時の利益の違い
不動産を売却して利益が出た場合、 確定申告をして譲渡所得税を納めなくてはいけません。
譲渡所得税とは、具体的に「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3つです。
譲渡所得税額は売却額をもとに算出するので、利益が多ければ多いほど、税金は高くなります。
ただ、節税に関する特例もあるので、条件に当てはまれば抑えることが可能です。
不動産売却で必ず発生する必要経費と費用の目安
まずは、仲介で不動産売却をした際に、必ず発生する必要経費をご紹介します。
主な必要経費は、次の3つです。
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書などを作成した際に発生する税金のことです。
不動産を売却する際には、不動産売買契約書を2通作成し、売主と買主がそれぞれ1通ずつ保有します。
印紙税は、それぞれの不動産売買契約書に収入印紙を貼り納税しますが、納税額は不動産売買契約書に記載されている不動産価格によって決まります。
印紙税額は印紙税の軽減措置により、令和6年3月31日までは半額です。
不動産価格と印紙税の額は、以下のとおりです。
不動産価格 | 通常税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円~1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円~1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
詳細は国税庁の『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』もご確認ください。
不動産仲介手数料
「仲介」で不動産売却をする際に、不動産会社は販売活動や契約事務などを行います。
不動産会社の「仲介」により買手が見つかったら、不動産会社に手数料として支払うのが不動産仲介手数料です。
仲介手数料はあくまでも成功報酬なので、販売活動をしてもらっても買手が見つかったら支払う必要はありません。
また、不動産買取で売却した際も、不動産仲介手数料は発生しないです。
不動産仲介手数料は法律で上限が決められていますが、不動産会社によっては不動産手数料を無料や半額にしているところもあります。
不動産仲介手数料の上限額は下記の計算式で算出できます。
不動産の取引額 | 不動産仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 5% |
200万円超え、400万円以下の部分 | 4%+2万円 |
400万円超えの部分 | 3%+6万円 |
表にあるように、400万円を超える際には計算が複雑になりますが、以下の速算式を使うと簡単に計算することができます。
「(売買金額×3%+6万円)×消費税」
例えば3,000万円で売却ができた場合、約100万円の仲介手数料が必要です。
(3,000万円×3%+6万円)×10%=1,056,000円
売却に必要な書類の取得費用
不動産売却には複数の書類が必要です。
必要書類を取得したり、紛失して再発行したりする場合には、手数料や費用がかかります。
主な必要書類と、取得する際にかかる費用の目安は次のとおりです。
書類の種類 | 取得費用の目安 |
---|---|
登記済権利証(登記識別情報) | 本人確認情報作成費用 約3~5万円 |
土地測量図面・境界確認書 | 測量費用 約60〜80万円 |
固定資産税納付通知書 | 固定資産税評価証明書発行費用 約400円 |
築確認済証・検査済証 | 台帳記載事項証明書発行費用 約400円 |
必要に応じて支払うことになる必要経費と費用の目安
ここからご紹介する必要経費は、売却して得た利益の額や、売却する不動産の種類によって発生するものです。
参考までに費用の目安や計算方法をご紹介しますが、より正確な金額を知りたい方は、 専門業者に直接見積もりを依頼してください。
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合に支払う税金で、譲渡所得税とは「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3つのです。
譲渡所得は次の計算式で算出します。
「譲渡所得=売却価格-(取得費用+譲渡費用)」
譲渡所得税を支払うタイミングは、確定申告後です。
確定申告は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに申告して、譲渡所得税を支払います。
確定申告を忘れると、追徴課税が発生するのでご注意ください。
詳しくはこちらもコラムをご覧ください。
住宅ローン完済手数料と登録免許税
住宅ローンが残っている家(抵当権が残っている不動産)は売却できないため、不動産を売却する前に一括繰り上げ返済をして住宅ローンを完済する必要があり、その際に手数料がかかります。
手数料は金融機関によって異なり、無料のところもありますが、費用相場は1万円~5万円です。
住宅ローンを完済したら、抵当権抹消登記が必要になり、その手続きをする際に、登録免許税がかかります。
登録免許税は、不動産1件・1筆につき1,000円かかるので、戸建の場合は土地建物で2,000円になります。
司法書士や税理士への報酬
名義変更や抵当権抹消手続き、確定申告は自分でもできますが、平日時間が取れない方は、司法書士や税理士に代行を依頼することも可能です。
ただし、代行を依頼すると、司法書士や税理士への報酬が発生します。
例えば、司法書士に名義変更手続きを依頼した際の費用相場は5万円~8万円、税理士に確定申告を依頼した際の費用相場は10万円~20万円、抵当権抹消登記を依頼した場合は1.5万円前後です。
土地の確定測量にかかる費用
不動産は高額なので、土地の面積少しでも違うだけで、売却額に大きな影響を与えます。
土地や戸建を売却する際に境界線が曖昧だと隣家とトラブルに発展する可能性が高いので、売却する前に土地の測量をして境界線を明確にしておきます。
新しく購入した土地や戸建であれば必要はありませんが、購入してからかなり年月が経っている場合は確定測量をしておいたほうが安心です。
確定測量の費用は、土地の面積や形状によってかなり異なり、費用相場は35万円~80万円です。
引越し費用
住み替えのために、不動産を売却する場合は、引越し費用が必要です。
売り先行で新しい住まいが決まっていない場合は、仮住まいが必要になるので、引越し費用は2回分となります。
引越し費用の相場は、時期と異動距離によって費用が異なりますが、4人家族で50km圏内の場合、1回あたりの費用相場は7万円~15万円です。
消費税
消費税は商品やサービスに課税される税金です。
不動産売却では、「不動産仲介手数料」「司法書士や税理士へ支払う報酬」「引越し費用」などに課税されます。
個人が不動産を売却した際は、土地および建物には消費税は課税されません。
不動産売却の必要経費を安くするためのコツ
ご紹介したように、不動産売却にはさまざまな費用が発生します。
しかし、不動産売却で発生する必要経費は、工夫次第で安くすることも可能です。
不動産売却の必要経費を安くする方法としては、以下のようなものがあります。
相見積もりをとって専門業者を決める
不動産売却では、引越し業者、ハウスクリーニング業者、司法書士、税理士などに仕事を依頼することも多いです。
依頼する際にかかる費用は、依頼先によって異なります。
依頼する際は複数の見積もりをとって、できるだけ安いところを選ぶとよいです。
しかし、専門業者のなかには悪徳業者もいるので、費用が安ければよいというわけではありません。
相見積もりをとるときは、費用相場を知り、対応やサービス内容を比較して慎重に選ぶことも大切です。
可能な限りできることは自分で行う
抵当権抹消手続き、名義変更、 確定申告などの受付は平日のみなので、司法書士や税理士に代行を依頼する人も多いです。
しかし、司法書士や税理士に代行を依頼すると報酬を支払わなくてはいけません。
各種手続きは専門家に依頼しなくてもできるものも多いので、費用を抑えたい方は、専門家に依頼せず自分で手続きをしましょう。
ただし、全く知識がないままにすると余計に費用がかかってしまったり、売却手続きに時間がかかってしまうったりすることもありますので、無理のない範囲で行いましょう。
買い先行で住み替えをする
住み替えの場合には、新しい住まいを先に購入する「買い先行」と、家を売却してから新しい住まいを購入する「売り先行」があります。
先に家を売却してしまうと仮住まいが必要になるため、仮住まいの家賃と引っ越し費用が2回分必要。
「買い先行」であれば既に引っ越し先が決まっているので、仮住まいが不要で引っ越しも1回で済みます。
ただし、「買い先行」の場合は今住んでいる家が目標の金額で売却できないと、 資金繰りが苦しくなるので、資金に余裕がある方のみ有効です。
譲渡所得税額を安くするために節税対策をする
節税対策をしっかりとしておくことで、譲渡所得税額を安くすることが可能です。
譲渡所得税を安くする方法としては次のような方法があります。
特別控除を申請する
不動産売却で申請できる特別控除には、「居住用財産の3,000万円特別控除」「特定の居住用財産の買換え特例」「相続空き家の3,000万円特別控除」などがあります。
併用できるものとできないものがあるので確認が必要です。
適用条件については細かいルールもあるので、詳細は国税庁のホームページも参考にご覧ください。
居住用財産の3,000万円特別控除 | 居住用住宅を売却する際に適用可能。最高3,000万円まで控除。 『国税庁:No.3302 マイホームを売ったときの特例』 |
特定の居住用財産の買換え特例 | 居住用住宅を住み替えのために売却した際に適用可能。※支払いがなくなるのではなく、将来に繰り延べする 『国税庁:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例』 |
相続空き家の3,000万円特別控除 | 相続または遺贈で取得した家や土地を売却した際に適用可能。 『国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』 |
5年以上所有してから売却する
不動産は購入してから5年以上所有すると譲渡所得税率が下がります 。
短期譲渡所得の税率 | 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63% |
長期譲渡所得の税率 | 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315% |
大掛かりなリフォームはしない
誰でもできるだけキレイな家に住みたいので、リフォームをすれば買手が早く見つかると思いがちです。
汚れや傷が目立つのであれば、修繕はしておいたほうがよいですが、基本的に不動産売却においてリフォームをする必要はないです。
その理由は、中古物件を探しているほとんどの人はリフォームを前提として住まいを探しているからです。
また、 仮に500万円かけてリフォームをしても、その金額を販売価格に上乗せすることはできませんし、リフォームをした分売却価格が必ずしも上がるとは限りません。
できるだけ早く買手を見つけたい場合は、リフォームよりも費用が安いハウスクリーニングやホームステージングがおすすめです。
不動産買取で売却する
仲介による不動産売却は、自分で販売価格を決められるので、上手に売却すれば多くの利益をあげられるメリットがありますが、高額な仲介手数料を支払わなくてはいけないのがデメリットです。
不動産買取は不動産会社に直接不動産を買い取ってもらうので、不動産仲介手数料が発生しません。
また、不動産会社が買い取るので売却手続き完了までの期間が短いので、早く売却をしてしまいたい人にもおすすめです。
ただし、不動産買取の場合、仲介の場合よりも売却価格が下がりやすい傾向。
相場価格の7割程度となることが多いので、なるべく高く売りたいと考えている人にはおすすめできません。
仲介手数料が無料の不動産会社に依頼する
仲介で不動産売却をした場合、仲介手数料がかかることが多いですが、不動産会社によっては無料や半額のサービスをしています。
先ほどの例でいいますと、3,000万円の物件の場合、約100万円もかかりますが、この費用が0円もしくは50万円になれば必要経費をかなり抑えることが可能です。
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まとめ
不動産を売却する際は、さまざまな必要経費が発生します。
必要経費を考慮せずに売り出し価格を設定してしまうと、思うように利益が上がらないだけでなく、資金繰りが難しくなってしまう可能性もあります。
必要経費は工夫次第で安く抑える事は可能なので、不動産売却をご検討中の方は事前に必要経費を把握し、早いうちから準備をして、不動産売却を成功させましょう。