不動産の購入や借りる場合、気になる点のひとつとして仲介手数料があります。不動産取引や引っ越しにおいては他に様々な経費が掛かるため、仲介手数料はなるべく安く抑えたいし、できることなら払いたくないものです。
そこでこの記事では、売買や賃貸契約をする際の仲介手数料について解説しつつ、支払いを安くする方法について分かりやすくお伝えしていきます。
目次
仲介手数料とは
仲介手数料とは、不動産取引をする際に仲介業者に支払う報酬のことです。依頼した業者が物件調査や事務作業などを行った対価としての報酬になりますが、仲介手数料は顧客に対して際限なく請求できるわけではありません。
仲介手数料の金額
業者からの不当請求を防ぐため、売買・賃貸それぞれの上限額は宅建業法で決められています。
売買 | 売買代金の3%+6万円+消費税(基本) |
賃貸 | 賃料の1ヶ月分+消費税 |
また、仲介手数料は法律で消費税の課税対象と定められています。
仲介手数料の支払い時期
仲介手数料の支払いは契約締結時に行います。成功報酬のため、内見や検討段階で取引を止めた場合は支払う必要はありません。
解約した場合に仲介手数料の支払いは必要か
商談や契約時には想定していなかった理由などにより、やむなく解約をすることもあるかと思います。そのような場合でも仲介手数料の支払いが必要になるかを解説します。
売買の場合
解約時の仲介手数料の支払いは、買主の帰責性の有無が問われます。帰責性とは、責に帰すべき理由、つまり過失の有無を指します。
買主の帰責性の有無
買主の帰責性の有無は主に以下のようなものがあります。
帰責性あり | 帰責性なし |
・契約内容を履行できなかった ・自己都合での解約 ・反社会的勢力との関係性が見つかった | ・居住や使用に適さない欠陥が見つかった(契約不適合責任) ・自然災害などで物件が使用不能になった(危険負担) ・住宅ローンが通らなかった(住宅ローン条項ありの場合) ・契約で定めた特約を満たせなかった(停止条件付売買契約など) |
帰責性なしの場合
帰責性なしの場合は、買主に過失がありませんので契約を解除することができます。解除とは、最初から契約が無かったものと同様になるため、この場合には仲介手数料の支払いも不要となります。
契約不適合責任や危険負担は2020年施行の改正民法で定められていますが、解除時における取り決めがある場合は契約書に記載する必要があります。
住宅ローン条項とは、住宅ローンの審査が通らなかったら解除できる、と事前に取り決めておくことです。これは売主に不利な特約のため、特約に記載がなければ解除は難しくなります。
停止条件付売買契約とは、あらかじめ定めた条件が成就した時点で、契約締結日にさかのぼって効力が発生する契約のことをいいます。例えば、現在所有している家が売却できたら購入する、などです。
帰責性ありの場合
帰責性がある、つまり買主の過失の場合は契約解除とはならず、仲介手数料の支払いが発生します。
賃貸の場合
賃貸の場合も基本的には売買と同様になります。契約開始日以降はもちろんのこと、契約開始日以前でも重要事項説明を行った後であれば、自己都合の解約による仲介手数料の返金は通常行われません。
仲介手数料を払わなくても良い方法
先に挙げたとおり、仲介手数料は業者の報酬となるため、支払わなければならないのが通常です。ただ、最近では顧客サービスのために仲介手数料の減額や無料をセールスポイントにする業者が増えてきています。
そこで、売買・賃貸それぞれの仲介手数料を支払わなくてもよい場合や、安くなる場合について解説します。
売買
売買での仲介手数料無料は、主に以下のパターンがあります。
売主のみから仲介手数料を受け取っている場合
3,000万円×6%+6万円+消費税(10%)= 1,036,800円 |
これは売主・買主のどちらか片方と媒介契約を結んでいる場合の報酬になるので、双方から仲介を依頼された場合は、この2倍の額が上限額となります。
この場合に、仲介業者としては総額で2,073,600円を受け取る権利がありますが、買主側からの受け取りを放棄して売主のみから受け取ることで、買主の仲介手数料無料を実現しています。
業者が売主の場合
業者が自社の物件を販売している場合は、仲介をしていないため仲介手数料も不要となります。販売広告の取引態様に「売主」と記載があればこのパターンになります。
ちなみに、物件の仲介をしている場合は、取引態様は「媒介」または「代理」となります。
賃貸
賃貸での仲介手数料無料は、主に以下のパターンがあります。
業者が貸主の場合
業者が貸主の場合は、仲介をしていないだけでなく、月々の家賃収入や管理費が入るため、仲介手数料が無料となることがあります。また、貸主は別でも管理業者が募集・仲介をしている場合でも同様に仲介手数料が無料となることがあります。
貸主から広告料が支払われている場合
賃貸住宅では、入居者がいなければ経営が成り立たないため、できるだけ空室期間を短くすることが望まれます。ただ、通常どおり募集をしていても、近隣に新築物件ができたなどの理由によりなかなか埋まらなくなることがあります。
そのような場合、貸主から仲介業者に対して契約が決まった際に広告料が支払われることがあります。業界内ではADと呼ばれ、一般の顧客の目に触れることはありませんが、金額は賃料の1~3ヶ月分が相場となっています。
そうしたAD付の物件であれば、仲介業者は借主から仲介手数料を貰わなくても収入を得ることができるため、結果として仲介手数料を無料にすることができます。
企業努力の場合
賃貸の仲介手数料は上限が賃料の1ヶ月分ですが、経費削減などの企業努力で半額に抑えていることがあります。また、貸主から半額を貰うケースもあります。
仲介手数料の値引きは可能か
仲介手数料の賃料1ヶ月分の内訳は、宅建業法では貸主・借主双方から50%ずつと決められており、承諾を得た場合においてはどちらか片方から100%受け取ることができるとされています。
ただ、実際は借主が100%負担することがほとんどです。もし賃料1ヶ月分まるまる請求された場合は、半月分まで減額交渉も可能となりますが、払いたくないという気持ちを優先するだけではなく、今後の関係性などを考慮して穏便に交渉を進めることが大切であると言えます。
まとめ
不動産取引は、売買はもちろん賃貸においても大きな出費が伴います。できるだけ余剰の資金を持ってその後の生活を円滑に過ごすためにも、仲介手数料を払いたくないと願うのは当然のこと。少しでもお得になるような選択肢のご検討をおすすめします。