不動産売買システムのレインズ(REINS)とは?|売主にとってのメリットと活用方法

  • 記事公開日:2018/12/31
  • 最終更新日:2023/01/26

不動産売買にあたってよく耳にする「レインズ」。いったいどんな用途で使われており、個人でも利用できるシステムなのでしょうか。

この記事では、レインズの仕組みや設立目的、レインズの利用者について解説。
また、レインズに物件を登録することで売主にどのようなメリットがあるのか、不動産会社はどんな時にレインズへ物件登録義務があるのか、売主がレインズを最大限活用する方法について、詳しくご説明します。

レインズ(REINS)とは

「レインズ(REINS)」は「Real Estate Information Network System」の各英単語の頭文字から付けられた名称で、「不動産流通標準情報システム」を意味します(英語で「real estate」は「不動産」のこと)。

1986年に設計された「レインズ(REINS)」は、レインズに加盟している不動産会社同士で物件情報を共有できる、コンピューターネットワークシステム。
国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しています。

具体的には、ある不動産会社が売り物件や貸し物件の情報をレインズに登録すると、レインズ上で物件情報が公開され、全国の他の不動産会社がその物件情報を閲覧できるシステムです。

レインズは「東日本レインズ」、「中部レインズ」、「近畿レインズ」、「西日本レインズ」の4つに分けられ、それぞれの事業圏域は下表のとおりです。

通称 正式名称 事業圏域
東日本レインズ (公財)東日本不動産流通機構 北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・
山形県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・
埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・
山梨県・長野県
中部レインズ (公社)中部圏不動産流通機構 富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・
愛知県・三重県
近畿レインズ (公社)近畿圏不動産流通機構 滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・
和歌山県
西日本レインズ (公社)西日本不動産流通機構 鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・
徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・
佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・
鹿児島県・沖縄県

レインズの仕組み

不動産売買の例を挙げて、レインズの仕組みをご説明します。

たとえば、所有する中古マンションを売却したい方(売り手)が不動産会社A社に相談。
売却を依頼して「媒介契約」を結んだとしましょう。

不動産会社A社はレインズに不動産の物件情報等を登録します。

一方、中古マンションを購入希望の方(買い手)から相談された不動産会社B社は、買い手の希望条件に合った物件をレインズで検索。
良い物件があれば買い手に提案し買い手が内覧を希望すれば、売り手の不動産会社A社に連絡を取った上で物件に案内します。

売り手 → 不動産会社A社 ⇔ レインズ ⇔ 不動産会社B社 ← 買い手

買い手が物件を気に入って売買が成立すれば、売り手の不動産会社A社はレインズに「成約登録」します。

成約登録された物件情報は、レインズ上で加盟不動産会社が閲覧でき、不動産の相場を把握するデータとして利用されています。

レインズ設立の目的

レインズはなぜ設立されたのでしょうか。
主な設立目的は、「不動産市場の活性化」と「売主の利益保護」です。

不動産市場を活性化

レインズが設立された目的の1つが、不動産市場の活性化です。

レインズ設立前の不動産売買における広告方法は、自社店舗に物件のチラシを掲示したり、チラシをポスティングしたりすることがメイン。
この方法だと、限定されたエリアでしか売り物件情報を周知することができませんでした。

レインズ設立後は、レインズに売り物件を登録すれば、日本中の多数の不動産会社に物件情報を見てもらうことができるため、広く買い手を探すことができます。

また、不動産の購入を希望している買い手にとっては、レインズに登録されている幅広い物件の選択肢の中から探してもらうことができるので希望条件に合った不動産が見つかりやすくなります。

以前は相談した不動産会社の顧客が持っている不動産や、限られた物件数の中からしか探すことができませんでした。

このように、売り手にとっても買い手にとってもメリットがあるレインズは、不動産市場の活性化に役立っています。

売主の利益保護

レインズが設立されたもう1つの目的は、売主の利益保護。
以前は、不動産の売却を依頼された不動産会社が物件情報を「囲い込み」するケースが問題となっていました。

不動産売買では、売り手から売却依頼を受けた不動産会社A社が不動産情報を公開。
不動産購入を希望している買い手から依頼を受けた不動産会社B社が、その不動産情報を見て買い手に紹介します。

買い手が購入を決定して売主も了承すれば不動産取引が成立。
不動産会社A社は売り手から、不動産会社B社は買い手からそれぞれ仲介手数料を受け取ります。

ところが、不動産会社が物件情報を広く公開せずに「囲い込み」をし、売り手側の不動産会社が自ら買い手を見つけられれば、不動産会社は売り手・買い手の両方から仲介手数料を受領できます。

このような取引を、不動産会社が売り手または買い手のどちらか一方から仲介手数料を受け取る「片手取引」と区別して、「両手取引」と言います。

このように不動産会社にとって利益の大きい「両手取引」を狙うため、物件を「囲い込み」するケースがあったのです。
不動産会社の「囲い込み」は、より有利な条件で売却できる可能性を狭めてしまいます。

レインズに物件を登録して広く公開することで、多数の不動産会社の目に触れる機会が増え「囲い込み」を防ぐ効果があります。

レインズは不動産会社しか利用できない

レインズは一般公開されておらず、会員である不動産会社のみが利用できるシステム。
一般の個人は物件情報を閲覧できず、レインズを利用する不動産会社を通して、物件の売却や購入を進めることになります。

ただし、2016年より売主に限ってレインズで物件登録内容や取引状況を確認できるようになりました。

レインズ(REINS)に物件登録するメリット

不動産会社が物件情報をレインズに登録することで、売主にどんなメリットがあるのでしょうか。

少ない手間で広く買主を募集できる

レインズに物件情報が登録されると、瞬時に全国の不動産会社に公開されます。
売主は不動産会社一社に依頼するだけで、短い期間で広く買主を募集することが可能です。

また、インターネット上で物件情報を公開することで、上述した様に不動産会社による「囲い込み」を予防する効果もあります。

物件の詳細情報が掲載される

不動産売買では、広告に物件の詳しい情報が開示されている方が興味を持ってもらいやすくなります。

同じ物件でも、広告に限られた情報しか載っていない場合と、詳しい情報が載せられている場合を比べたら、後者の方が有利です。

特に中古不動産の売買では、開示される物件情報が十分でないことが、中古不動産の流通を妨げている原因の1つと言われてきました。

レインズに物件情報を登録する際は必須登録項目が決まっているので、必然的に最低限の項目を網羅した物件情報が掲載されます。

物件の早期売却につながる

上記2つのメリット、つまり広く買主を募集し物件の詳細情報を公開することが物件の売却可能性を高め、早期成約につながります。

また、物件情報がたくさんの人の目に触れ買い手候補者が多く集まれば、適正価格で取引されやすくなるという利点もあります。

レインズ(REINS)への登録義務は媒介契約の種類による

ここまで、レインズに物件情報を登録してもらうことは売主にとってメリットがあることをお話してきました。

それでは、不動産会社に売却を依頼すれば必ずレインズに登録してもらえるのでしょうか。
実は、不動産会社と結ぶ「媒介契約」の種類によって、不動産会社のレインズ登録義務が異なります。

不動産の売却を不動産会社に依頼する際、売主と不動産会社の間で「媒介契約」を結びます。
「媒介契約」は「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類。

この内「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」を締結した場合、不動産会社はレインズに物件情報を登録する義務があります。

媒介契約の種類 レインズ登録義務
専属専任媒介契約 媒介契約締結の翌日から5日以内にレインズに登録する義務がある
専任媒介契約 媒介契約締結の翌日から7日以内にレインズに登録する義務がある
一般媒介契約 登録義務なし(任意で登録することは可能)

各媒介契約の内容について、以下で解説します。

専属専任媒介契約

「専属専任媒介契約」は、売主が不動産会社1社だけに媒介を依頼する契約で、売主は自分で買主を探すこと(「自己発見取引」と言う)ができません。

不動産会社は媒介契約締結の翌日から5日以内にレインズに登録、売主に1週間に1度業務報告する義務があります。
契約期間は3ヶ月以内です。

専任媒介契約

「専任媒介契約」は、「専属専任媒介契約」と同様、売主が不動産会社1社だけに媒介を依頼する契約。
ただし、「専任媒介契約」は自己発見取引が可能です。

不動産会社は媒介契約締結の翌日から7日以内にレインズに登録、売主に2週間に1度業務報告する義務があります。
契約期間は3ヶ月以内です。

一般媒介契約

「一般媒介契約」では、売主は複数の不動産会社に媒介を依頼することができ、自己発見取引も可能。
レインズへの登録や業務報告は任意となります。
契約期間は国土交通省が推奨する「標準媒介契約」の場合、3ヶ月以内です。

以上のように、確実にレインズに登録してもらうには「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を選べばいいことになります。

この2つの契約では不動産会社1社のみと媒介契約するので、販売に力を入れてもらいやすいメリットもあります。

売主がレインズ(REINS)を最大限活用する方法

ここからは、売主がレインズを最大限活用する方法をご紹介します。
まず、自身の物件が本当にレインズに登録されているかを確認しましょう。

登録されていたら、登録内容を確認することと不動産の取引状況をチェックすることが大切です。
また、物件相場を把握するにはレインズマーケットインフォメーションを利用するのもおすすめ。

不動産会社がレインズに物件情報を登録すると、「登録証明書」が交付されます。
不動産会社は、売主と「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んでいる場合、売主に登録証明書を交付する義務があります。

売主が登録証明書に記載されたIDとパスワードを使って「売却依頼主物件確認」画面にログインすると、売却物件の登録内容、物件の図面、取引状況を確認できます。

売却物件のレインズ登録内容を確認

売却物件の登録内容を確認する際には、物件情報が十分かどうか、物件の図面が登録されているかがポイント。

物件情報が十分登録されているか

レインズに物件情報を登録する際の必須登録項目には、住所、面積、間取り、価格などがあります。
これらの必須項目が正確に入力されているのを確認するのはもちろんですが、マンション名、駅からの距離、空室か賃貸中かなど、必須項目以外も入力されているかどうかも確認してください。

不動産売買に当たって重要な項目なのに入力されていない場合は、不動産会社に問い合わせてみましょう。

売却物件の図面も登録されているか

レインズに物件情報を登録する際、任意で物件の図面(間取り図等を載せたチラシのようなもの)を登録することができます。
一般的に、図面を掲載した方が買い手の検討対象にしてもらいやすくなります。

買い手側の不動産会社がレインズで物件を検索する際、検索条件として「図面有り」の物件に絞って検索することが可能。
このため、図面が登録されていない物件は、検索条件から外れてしまう可能性があるのです。

レインズ売却物件の図面が登録されているか、また図面の内容が正確か、アピールポイントも含めて情報が過不足なく含まれているか確認しておきましょう。

レインズの取引状況管理機能を活用

売却物件の登録内容を確認した後は、随時レインズで取引状況も確認することをおすすめします。
物件情報がレインズに登録されたからといって、不動産会社による物件の「囲い込み」が100%起こらないとは限らないためです。

取引状況は、「公開中」、「書面による購入申し込みあり」、「売主都合で一時紹介停止中」の3種類。
「公開中」であれば特に問題ありません。

公開中 買い手の不動産会社から案内が受けられる状態
書面による申し込みあり 買い手から書面による購入申し込みを受けた状態
売主都合で一時紹介停止中 売主の事情により紹介を一時停止している状態

レインズで取引状況が「公開中」の物件は、買い手側の不動産会社(「客付業者」と言う)から問い合わせがあった際に、原則として物件の紹介(案内)を拒否できません。

ただ、買い手の不動産会社から問い合わせがあった際に「今買い付けがあったばかりでレインズを更新していなかった。」と言って紹介を断るケースがあるかもしれません。

不動産会社から報告を受ける際などに、物件に対する問い合わせの有無や購入申し込みの有無など、取引状況を詳しく聞くようにしましょう。

レインズ取引状況が「書面による購入申し込みあり」の場合で、不動産会社からまだ報告を受けていない場合は、不動産会社に問い合わせてみても良いでしょう。

レインズ取引状況が「売主都合で一時紹介停止中」とは、売主側の意向で紹介を一時停止している状態。このため覚えがない場合は不動産会社に問い合わせましょう。

レインズマーケットインフォメーションで物件相場を把握

売主であっても、レインズで確認できるのは自身の売却物件の情報のみ。
売り出し価格が適正かどうか調べるには、一般公開されている「レインズマーケットインフォメーション」を活用するのがおすすめ。

不動産会社だけでなく、個人も閲覧可能で、直近1年の取引情報のグラフと、個々の取引情報が見られます。

レインズマーケットインフォメーションでは個々の取引の「成約価格」も見られるので、周辺地域の相場を把握するのに便利です。

大手不動産ポータルサイトなどでも売り物件情報を閲覧できますが、売り手の「希望価格」しか分かりません。
不動産売買では、値下げ交渉等により実際の売却価格(「成約価格」)が希望価格より低いケースもあります。

レインズマーケットインフォメーションで取引情報を検索するには、「地域」、「沿線」、「最寄駅」、「駅からの距離」、「単価(〇万円以上〇万円以下)」、「専有面積(〇㎡以上〇㎡以下)」、「間取り」、「築年数(〇年超〇年以下)」、「成約時期(3ヶ月以内など)」などの検索条件を設定できます。

できるだけ最寄駅が同じで住所が近い(または類似する地域にある)、駅からの距離や築年が似通った物件の取引情報を検索して参考にしましょう。

一般的に、類似する物件の取引情報は、戸建よりもマンションの方が見つかりやすい傾向があります。

なお、成約時期が古過ぎないことも大切です。
価格変動が激しい時期は、古い取引情報が参考にならない場合があるためです。

レインズマーケットインフォメーションの取引情報を参考にする際には、以下の2点に留意しましょう。

1)マンションと戸建の取引情報だけで土地の取引情報はない
土地の取引情報については、国土交通省の「土地総合情報システム」が参考になります。

2)個人情報保護の観点から詳しい住所や面積、総額は公開されていない
住所は、町名は記載されていますが、〇丁目までは示されていません。
たとえば、「東京都中央区銀座4丁目」の物件は「中央区銀座」と表示されます。
面積は「40~60㎡」などレンジで示されており、売却価格の単価(50万円/㎡)のみ示されているので、総額もレンジでしか分かりません。

個人がレインズマーケットインフォメーションを使って相場を正確に把握するのは難しい面もありますが、不動産会社の説明だけに頼るのではなく、自分で調べることにより相場観をつかみやすくなります。

まとめ

この記事では、レインズの仕組みと設立目的、レインズに物件登録するメリット、不動産会社のレインズへの登録義務についてご説明しました。
また、個人の売主がレインズを活用する方法もご紹介しました。

これまで、日本の不動産売買市場は透明性が低いと言われてきました。

そこで、国は不動産市場活性化や売主の利益保護などの観点から、レインズを設立。
2016年には、これまで不動産会社しか閲覧できなかったレインズを、売主も自分の物件に限って閲覧できるようになりました。

インターネットが普及したおかげもあり、閉鎖的だった不動産業界が徐々に変わりつつあります。

不動産は高額な資産。
その大切な資産を売却するに当たっては、不動産会社だけに任せておくのではなく、レインズを活用して適正な取引の実現を目指しましょう。